• 「穫」生産者のご紹介

食感を楽しむ生キクラゲの夏。

貴重な地元キクラゲが生まれた理由

そもそも、キクラゲという食材は、ほとんどが輸入品に頼っています。高知市にある宗安寺きのこセンターさんでは、中国産への不安が言われ出した5年ほど前から、アラゲキクラゲを栽培するようになりました。全国的にも生キクラゲは熊本、宮崎、徳島など限られた地域で作られるだけに、貴重な食材です。


生キクラゲ(左)と乾燥キクラゲ(右)。夏場は生で、他の季節は乾燥品を使います

栽培のきっかけは、沖縄の生産者さんが作れなくなり、菌のメーカーから提案されて、「物好きだから始めたんですよ」と話す、オーナーの大坪久二子さん。オガクズのブロックを使った菌床栽培のきのこメーカーとして、25年の歩みを経てきたベテラン生産者さんです。こちらでは、シイタケ、ヒラタケ、エリンギなど、多種のきのこを栽培されています。


オーナーの大坪久二子さん。きのこのキャラクターは自分でデザインしました。

温度と湿度を管理して、いざ「発生!」

鏡川河畔の生産現場を見学させていただきました。キクラゲは生を夏場に出荷し、他の季節は乾燥キクラゲに加工したものを出荷します。

栽培の手順は、菌を植えたオガクズブロックの入った袋を1ヶ月半寝かせて、「生えなさいよ」と光を当ててやって、発生をかけます。すると1ヶ月で生えてきて、4~5ヶ月収穫ができるのです。葉が丸くなってきたころが食べごろ。育ちすぎると波打って薄くなるので、こまめな収穫がコツ。



土の代わりになる広葉樹のオガクズは主に窪川、梼原産。徳島で粉にして、再び高知へ。


きのこ栽培専用の霧吹き機械、通称ぞうさん。

育つには湿度が90%必要で、気温が25℃前後の時に発生させるのだそう。そこで、ミストを吹き出す機械、通称「ぞうさん」が活躍。広い部屋全体へ霧が回るのです。夏は水に氷を入れて数℃冷やし、逆に冬はお湯を入れて、霧で室温を数度上げて調整します。


お山の植物性コラーゲン


プルプルゆれるような、植物性のコラーゲンが、根元や、ひだの内側にたっぷり詰まっています。指で生キクラゲの切り口をつまんでみると、透明なプルプルが押し出されそうなほど。お肌を大事にしている女性にとって、生キクラゲは格別うれしい食材かも。やわらかいのですが弾力があって、葉の厚みは、「これまで使っていた中国産の乾燥品とは別物の食感」とシェフたちも口をそろえます。

茶色い葉の裏には、白い酵素がびっしりと付いて、毛のように見えます。これが、アラゲキクラゲの由来。「これを洗い落とさずに食べてほしい」と生産者からのメッセージです。乾燥させると、葉の裏側にある白い酵素が目立ち、アラゲキクラゲらしい姿になります。


生キクラゲと大海老の醤油煮込み


いろんな野菜や生きものたちと


すっかりハウスの主になっているニワトリたち。産み立て卵が手に入ります。

きのこの本場といえば、東北地方。熱心な大坪さんはナメタケ栽培では特許を取りましたが、震災で元の菌が作れなくなってしまい、残念ながら栽培が終わってしまったそうです。

大坪さんが育てているのは、きのこだけではありません。敷地内にあるハウスの中は、消毒をせず、多品種の野菜が実り、ニワトリたちのいる楽園です。平飼いされているニワトリにはトサジローもいて、卵は、きのこ類や野菜などと一緒に、すぐ前の良心市へ出しています。卵かけご飯に最高だそう。「食べたいものは、育てんといかん」。芯を感じさせられる言葉です。

庭にはカブトムシやメダカもおり、お気に入りの皇帝ダリヤは近所や庭へ300本も植えました。咲き誇る季節が楽しみです


菌床を再利用して、畑を元気に


ところで、使い終わったきのこの菌床(廃菌床)を畑に入れると、土がふかふかになって野菜の育ちがよいそうです。特に大根や人参などの根ものが、わっと出ます。菌がまだ生きていて、その活動によって土の中に隙間ができて酸素が入るので、根が元気になるのだとか。廃菌床を近隣の農家へ分ける機会が増えてきたこのごろです。

今のところ、きのこの出荷は県内のみで、業務用の他、量販店へも出しています。今回ご紹介した生キクラゲの口あたりのよさ、調理のしやすさは、ご家庭でもいろんな食べ方が工夫できそう。乾燥キクラゲは量が多いので機械も使いますが、晴れた日は天日乾燥をしていて、高知の太陽を吸った乾燥キクラゲができあがります。

問い合わせ先

宗安寺きのこセンター
〒780-0991
高知県高知市宗安寺832-2
TEL 088-844-3075
※向かいに良心市があります。


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