• 「穫」生産者のご紹介

甘いミディトマトを食卓へ。

ないものねだり、夢の甘さを追って


春野町東諸木の海岸近くにあるハウス。マルハナバチで受粉しています。高知のトマトはエコ栽培が進んでいる品目でもあります。

久保英智さんが春野のハウスで育てているのは、小ぶりなフルーツトマトよりちょっと大きめの、ミディサイズ。つまり中玉で糖度は8度前後、光センサーで選果します。口にすると自然な甘さがあり、赤すぎず、皮はフルーツトマト系で厚め。しっかりしたトマトだなと感じます。実はこれが、ありそうでないトマトなのです。

現在栽培されているほとんどのトマトは、桃太郎という品種を改良していて、小さなフルーツトマトも大きなトマトも、栽培方法の違いで生まれます。糖度を上げるには水を制限していくため、皮が固く厚くなり、逆に大きいトマトは水を含んで皮も軟らかくなるのです。中玉で甘いトマトを作るには、両方のいいところだけを伸ばさねばなりません。

オリジナルをイメージして挑戦


笑顔がチャーミングで、とにかく研究熱心な久保さん。高知の若き龍馬なのかも?

20代後半、1999年に名古屋からUターンしてお父さんのやってきた農業の世界へ入った久保さん。トマトの世界は十人十色で、生産者がそれぞれ独自のやり方を持っているのだそう。独学で農業に転身した久保さんは、近所の先輩にもアドバイスを求めてやってきました。

そして5年ほど前から、ミディサイズで甘いトマト作りに取り組んでいます。「一度、これや!とイメージに近いのができたけど、翌年は失敗して迷路に入り込みました」。大きくしすぎたら普通の大玉トマトになってしまって皮も軟らかくなるし、小さすぎると箱へ入れるにも手間がかかります。これで行けると思えばダメになる繰り返しで、久保さん自身が「かなり難しい域やと思います」と苦笑するほど。


木をいじめない育て方


葉の先までしおれていない、これが久保さん流の栽培メソッド。黄色っぽくてツヤのある若い実は、甘くなるとのこと。すごいツヤツヤの発見!

そんななか、これまで、安定して生産できる技術を確立させたいと、研究を重ねてきました。規模も少しずつ広げながら独学で試行錯誤した挑戦に、やっと結果が出てきたこの数年です。

久保さんのハウスへ入って驚くのは、トマトの葉っぱが青々としていること。土の表面は確かに乾いていますが、水を極限まで絞って葉をしおれさせ、甘味を引き出すフルーツトマトとは明らかに違います。まだ青い実には、甘さのしるしである、刷毛で引いたような緑の線が出ていました。

その年の出来が分かるのは一年で最も寒い、1月の下旬ごろ。「いけそうなのは、健全な感じがする木。しっかりした木になっていたら、うまくいく」とのこと。今年はその手ごたえがあったそうです。

ほんとの地元産トマトを料理する


皮のフチは特に甘みが集まります。この皮が厚ければ料理もしやすいメリットが。

収穫は11月から6月末まで、週に3日行います。販売先は県外がメインですが、高知市内の量販店でも手に入る、久保さんが手塩にかけて育てたトマトたち。

そして華珍園でも、2013年から中華の食材として使わせてもらうようになりました。同じ高知市の、いわばホームグラウンドで作られるトマトを探し、春野へ訪ねて行って意気投合。まずはサラダや和え物、炒め物などから始めましたが、甘いトマトは生で食べるのになじんでいて、火を入れるのは難しい食材です。「いろんなことやったら面白いですね!」と久保さんからエールをいただいて、スタッフも発奮。これを皮切りに、春野の他の品目へもネットワークを広げられれば、また一歩、前に進めそうです。


いつかトマトの観光農園を、春野で


「人と逆のことをやろうとしています。でも、普通の人に食べてもらえるトマトを届けたいから。」現在の栽培面積は80アール。来年はもう40アール増やす予定です。たまにお父さんのハウスを見ると、「いい木だなあ」と素直に思え、栽培方法を聞いたりすることも。お父さんは、近くにある一番いいお手本なのです。

将来、たとえば30年先になるかもしれないけれど、家族でトマトをはじめとする観光農園ができれば、という夢を持っている久保さん。「トマトはイメージどおりに作るのがむずかしい。やっと理想の味に近づいてきたので、これを安定させていきたいですね」。チャレンジは甘くないけれど、ハウスで育つ伸びやかなトマトたちの姿に、手ごたえが実っています。


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【問い合わせ先】
高知市春野町東諸木1844-1
(株)くぼファーム

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