水平思考

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ただ今修行中

今日の高知新聞朝刊の「ただ今修行中」のコーナーに調理スタッフの “市原賢一郎くん” が紹介されました!
それでは記事の全文をご紹介します。


「酢豚リャン(2人前)」「油淋イー(1人前)」
 高知市内の中華料理店の老舗「華珍園」。廿代町にある別館のお昼時は、洪水のように注文が押し寄せ、厨房には伝票が同時に20枚並ぶことも珍しくない料理人7人が動きっぱなしで、さながら戦場の慌ただしさだ。その一角で「揚げ場」に立つのは、キャリア約4年の市原賢一郎さん(23)。唐揚げや酢豚、イモの飴だきなどを担当する。「スピード命。技術はもちろんですが、とにかく体力が要る仕事です」。コック帽を目深にかぶり、黙々と肉を揚げ、中華鍋でたれを絡めては盛り付ける。南国市出身。子どものころ、「中華料理と言えばここ」と今の店に家族でよく食べに来ていた。厨房の様子をのぞき込み、「豪快でかっこえい」と思ったのを覚えている。食べるのが好きで作るのも好き。高知農業高校食品ビジネス科を卒業後、料理人を志して高知市内の調理師専門学校に入学。インターンシップで働いたのが華珍園別館だった。


「忙しくて忙しくて、テンパった。でも、縁があるなあって。先輩みたいに鍋、振りたいなあって」。そのままアルバイトに入り、数ヶ月後には正社員に採用された。多彩な食材を扱う中華料理。前菜の野菜を刻み、肉を切る仕込みに明け暮れた。立ちっぱなしの仕事に慣れたころ、人気メニューのチャーハンを担当することとなった。
 最初はご飯の代わりに塩を中華鍋に入れて振る練習。手首を使って鍋を操り、お玉を使って米を押し上げる感覚を身に付ける。
 実際に「まかない」で作って、味見してはまた鍋を振る。最初は鍋の周りにはご飯が飛び散った。米がつぶれていたり、パラパラでも水分が飛びすぎて食感が良くない。壁を乗り越える方法は実践あるのみ。2ヶ月かかって火加減、力加減を体にたたきこんだ。「店の味」に到達したかは、先輩5名が試食して見極める。全員から合格をもらったときは「うれしさ半分、不安が半分」。老舗の味を守る重圧を感じたが、任されてからの2年間は「自分のチャーハンが一番という気持ち」で臨んだ。
 最近心掛けているのは、食材を大切に扱うこと。実家はシシトウとピーマンのハウス農家。同僚と生産者を訪ね、作物を育てる苦労を聞くこともある。「農家の厳しさは少しは知っている。一生懸命作ってくれたものを料理で使うから、失敗は許されない」。そんな気持ちで取り組む料理。喜んでくれるお客さんの笑顔がなによりの励みだ。アンケートで自分の担当する料理が褒められるとやりがいを感じる。
 他店で働いて腕を磨きたい、いつか自分の店も持ってみたい。そんな将来も見据えるが、「中華飯、揚げそば…。まだまだ作ってない料理も多い。とにかく今は修行あるのみ」。家族のだんらん、にぎやかな宴会。そんな場面においしい料理は欠かせない。老舗の変わらぬ味を究めるべく、笑顔が広がる魔法の鍋を今日も振る。

    掲載いただいた高知新聞社さん、そして大野さん、本当にありがとうございました!