VOL.23翡翠かぼちゃで、新風を起こす。
いの町枝川
水田 かおり さん
緑色の果皮や柔らかい種ごと食べられる翡翠かぼちゃは、優しくてほんのりとした甘みが持ち味。マッチャン、韓国かぼちゃ、カボッキーなど、一般名もいろいろ。まだ日本では生産量がとても少ない野菜です。いの町での収穫は夏から初冬まで。栽培方法を改良しながら、県外へも出荷しています。
新しい野菜を探し、手掛ける喜び
数あるかぼちゃの仲間でも、いの町の高知水田農園が「翡翠かぼちゃ」と命名した韓国かぼちゃは、初めて口にした人が皆、「これ、かぼちゃなの?」と驚く新しい味です。ズッキーニのようでアクがなく、キュウリよりも甘みがあり、種にもまた味わいがあります。
育てているのは、農家に嫁いだ水田かおりさん。野菜ソムリエや農村女性リーダーなども取得しました。この翡翠かぼちゃ、「嫁の仕事」として、希少性の高いブランド野菜を試すなかで、水田さん自身が食べておいしかった韓国かぼちゃの種を翌日に買い、さっそく作ってみたのが始まりだそうです。特に中華料理の食材として好評で、翡翠かぼちゃという命名は、透明感のある緑色を宝石の美しさにたとえました。
育て方から開拓していく
ハウスの中は、背丈を超す吊り棚に這わせた翡翠かぼちゃが成り下がり、その隣には同じく棚仕立ての黄色いコリンキーも収穫を迎えています!
「普通は地面へ這わせるんですが、採り遅れや見残しもありますし、何よりも地面だと、こういうシュッとした形にならないんです。植物は不思議ですよね」と水田さん。棚仕立てをするようになって4~5年になり、こうして畝の間を広く取るのは、ここ2年ほどだそうで、独自の改良や工夫が欠かせません。
あちらこちらで黄色い大きな花が開いています。かぼちゃの仲間は1日花で、咲いたらすぐに人の手で授粉しないといけません。実に白いネットをかぶせているのは、傷を防ぐためと、朝晩に収穫する際、OKの目印でもあります。
街路市から始まったお付き合い
収穫前も収穫後も、果皮が傷付きやすい翡翠かぼちゃですが、1日ほどたつと落ち着いてきます。水田さんも、出荷する際にはかなり気を付けて、傷まないように県外へも発送しています。
実は、高知水田農園と華珍園とのお付き合いは古く、先代社長が高知市の街路市でお芋を探していて知り合いました。「このあたりは赤土で、昔から芋類の産地なんです。農家の女性たちは代々、高知の日曜市などへ出品してきました。道路事情が良くなる前は、リヤカーを押して咥内坂を越えて…大変ですが、それが生きがいでもあったはず」。農業をものづくりと考えれば、作り育てたものを前に、消費者と直接やり取りする街路市は、評価や要望を受ける貴重な場です。
オンリーワンの魅力がある翡翠かぼちゃ
「翡翠かぼちゃは見た目は堅そうですが、包丁を入れると、ススッと入っていく柔らかさ。炒めたら、色がフワッと変化して、透明感も増します。こうして使っていただけて、作りたいものが作れるのはうれしいこと」。そう水田さんがおっしゃるように、翡翠かぼちゃは適度な柔らかさと爽やかな色合いで、煮ても焼いてもおいしさが引き出せるのがオンリーワンの魅力なのです。
華珍園のシェフも、「調味料やスープを吸って、加熱しても緑色がきれい。私は食感が特に気に入ってます。種は下半分にたくさん入ってますね。まるごと食べられる、うれしいかぼちゃです」。サラダなど生食にもできるし、焼き肉などの添えにスライスして軽く焼くのもおいしいと聞きました。
他の野菜などと炒め合わせても、あんかけにしても、食べやすくて味がしっかり染みています。
好きだからこそ、おすすめしたい
「ほかの人が作ってないものは、わからないことも多いですが、希少性もありますよね。この味、本当においしいのでおすすめしがいがあります。あ、かわいいですね~これ」と、収穫した翡翠かぼちゃやコリンキーを愛でる水田さん。販促用に、フェルトで作った野菜のぬいぐるみを一緒に撮影するほどの熱心さ。県内のスーパーマーケットで産直コーナーに関わる仕事をしていた経験があり、野菜好きは筋金入りです。
東京や神戸でも、この希少な野菜の魅力に注目度は高く、「一度使ってもらったら、かわいがってもらっています」と笑顔に。日々、苦労しながら手塩にかけた作物への想いは、料理人の手にもしっかりと受け継がれて、食卓へと上ります。
【問い合わせ先】
高知水田農園
〒781-2120高知県吾川郡いの町枝川3503
Tel 088-893-1805
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