• 華珍園について

食材への想い

創業時から続く姿勢

数年前に中国製冷凍餃子と輸入野菜の問題が起こり、また、輸入牛肉の不安もすでにありました。そして食の安心・安全、地産地消の風潮が全国で一気に高まりました。横浜や神戸の中華街をはじめ、中国料理も食の安全性がお客さまから厳しく問われるようになっています。

食をどこから調達するかは、多様な価値観と考え方があります。私たち華珍園では創業以来、一部の専門調味料や専門野菜等を除き、鶏肉や豚肉など国産のものを使用してまいりました。創業時からの取引先が扱うお肉が国産中心だということもありますし、コスト優先に走って輸入品に頼ることはしてきませんでした。お米も地元米がほとんどで、少し国産米が入る程度です。


中国の食材や加工品への不安が募ったピークの時期、私たちとしては、お客さまからのご質問に答えられるよう、産地のお話ができる準備をしていました。しかし、「大丈夫ですか」といったご質問はなく、餃子(店の手作りです)については、むしろそれまでより多く出ているなと感じたほどで、大変ありがたいことです。
このことがあり、お客さまが華珍園の出す料理に、潜在的な安心感をもっていただいているのだという認識ができました。ただ、このころはまだ、高知の野菜へのこだわりはそれほどなく、国産をごく普通の感覚で使っている、という状況でした。

地元の食材へ目を向けて


平成21年3月、はじめて佐川町のチンゲン菜ハウスを見学しました。その後はアスパラガスやフルーツトマト、安芸のナス、白木谷のタケノコなど、3年間で約20カ所の産地へ見学に行きました。ほとんど毎月のように行っています。同時に、高知の生産者から仕入れる野菜が増えて、メニューが生き生きとしてきました。ご縁が人から人へとつながっていき、チンゲン菜をはじめ花ニラやマコモタケなど、地元産の中国野菜にも巡り会うことができました。見学はなるべく調理場のスタッフが参加できるようにしており、近くの生産者さんなら全員で行くこともあります。

今まで何気なく通っていた道路横のハウス、はじめて訪ねる町、そしてはじめて会う生産者や農協の皆さん、関係機関の皆さん…、少しずつですが、食の現場にふれ、「食の輪」ができてきた気がします。輪がひとつ生まれるたび、これからもお客様に安心してお食事をしていただくことをまず第一に、たくさんの元気な食材と、美味しいお料理をご提供するという決意が新たになるのです。

私たちにできること

最も大きな変化は、私たちの意識の変化でした。少し堅い話になりますが、中山間地域の資源活用や環境保全問題、地域活性化や町おこしへの取り組み、障害者福祉施設と地域住民との連携活動…などなど、産地を訪問して生産者の皆様とお話しするなか、多くのことを学ばせていただいています。

華珍園へ野菜やお肉、魚などを届けてくださる生産者の皆さんは、いわゆる大都市向けのシステム化された生産規模とは違います。時には地元でもまだまだ知られていないおいしい産物との出会いがあります。華珍園が関わることで、生産者の方が、個人で、あるいはグループで、「使ってもらってちょっとうれしい、気持ちよく野菜が作れる」、そんなことが起こればいいと思うのが正直なところです。そこにこそ、私たちにとって替えがたい魅力があるのです。



大量に作る農産物以外の流通は、特に業務用では、まだ手つかずと言ってよいのではないでしょうか。毎日少しずつ使うほどの量であっても、とれたてのおいしさがその日のテーブルへ並べられたら、料理人冥利です。これはもちろん、生産者の方のご協力なくしては成り立たないことであり、心から感謝しております。


私たち自身が、高知の地元で根を張り、生きてゆく中国料理店です。地元食材を通じて、それに関わる高知の人々の生活や心、そして地域がかかえている問題を、微力ながら発信してゆくことを目指していきたいと考えております。中国料理を提供する華珍園が、食のフィルターとなって、生産現場や生産者の方と、消費者やお客様をつなげてゆくこと。パズルのピースがどの一個をなくしても完成しないように、また、隣どうしが等価であるように、かけがえのないつながりが、食の仕事を通じて生まれることを、日々願っております。


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