VOL.07寒い季節に元気が届く、原木シイタケと菜花。

高知県高知市春野町西分

社会福祉法人高知福祉会

あおぞら「蒼空舎」

あおぞら蒼空舎の皆さんは、高知市郊外の春野町で、地域の協力を得ながら、多品目の野菜や花ポットを生産しています。冬から春にかけて収穫されるのが、中華料理とも相性のよい、原木シイタケと露地の菜花。生シイタケは毎日欠かせない食材とあって、朝のとれたてが厨房に届くこの季節は、大助かりなのです。

地域を元気にする仲間たち

まぁるい傘が新鮮なシイタケと、つぼみの菜花、どんなところで栽培されているのでしょうか。
生産する「あおぞら蒼空舎」は、高知市に拠点を置く福祉事業所のグループ。主に春野地区で活動しています。


みずみずしいナバナ。特有の苦味がうれしい春の味。原木シイタケは生食にも加工用にも適した「にく丸」という肉厚の品種。

障がいを持ったメンバーたちと、支援する職員たちが集まり、地域のサポートを受けながら、農園や野菜加工、軍手製造、福祉ショップの運営などを手がけてきました。平成20年に事業をスタートして平成23年末までに、春野町で24カ所の農園ができています。

現在15人のメンバーは8割がグループホームから通勤。自立して仕事を続け、仲間たち一人ひとりの個性や希望を叶えること、そして地域を元気にするという大きな役割をもって、日々励んでいるのです。

自分たちの強味を見つける

手袋製造から入った黒沢圭子さんは、仲間たちや職員にとって、頼れるマネージャー的お姉さん。農業を熱心に指導する上田進さんは春野在住ですが、退職後に蒼空舎へ誘われるまで、家庭菜園の経験だけでした。川村哲也さんも、営業の仕事から、気持ちを動かされて転職したそうです。


多品目を手がけてるため、春まきと秋まきで収穫の時期をずらして対応します。皆で『畑の会』を開いて、計画を話し合いながら。地域の農業と競合しない、すきま市場を探して見つけたのが、原木シイタケとナバナでした。特にシイタケは収益を上げる要素の大きい品目です。メンバー仲間たちの収入は毎月の障害基礎年金が7万ほどで、それに事業所で働いた工賃を上積みして生活しています。だから、支援するスタッフは工賃アップが使命なのです。


原木シイタケのハウスで、左から上田さん・川村さん・黒沢さん。

シイタケはお山が、チョウチョはナバナが好き

「すべて生きものなので、気を遣いますね。商品になるよう、少しでも上達せんといかんのです。」と上田さん。シイタケの種ごまを植えつける”ほだ木”は、四万十町大正地区のクヌギです。3年ほど使います。原木の養分と水、太陽だけで育つ無農薬栽培。ハウスが薄暗いのは、シイタケの好むお山の環境に近づけるためです。


新しい方のハウスには新鋭の資材が入っていました。一見、イベントの装飾にも見えるグレーのすだれ糸が、びっしりと天井から下がっています。この角度で日射時間を減らしているのだそう。シイタケとナバナは収穫がほぼ同時期で、11月末から始まり、3〜4月までです。ナバナにも農薬は精一杯使わず、「チョウチョが来る前に収穫を終えます」。なるほど、なるほど。


サイズごとに選別したシイタケを袋詰めして出荷します。今日は94kgとれました。最高で400kgあったことも。作業に使う軍手は、メンバーたちが作った製品の二級品。


朝どれが、お昼のテーブルへ乗る


左:原木しいたけと鶏肉のカキソース煮 右:菜花と白身魚の豆豉炒め

ところが、シイタケの売り先は作った後から探すことに。お客さんを探していた蒼空舎さんと、地産野菜を探していた華珍園を、県の地産地消課が引き合わせてくれました。特に生シイタケは毎日使う食材。おいしいし、品質が安定しているので、冬から春にかけては蒼空舎さんの原木シイタケに助けられています。

華珍園では干しシイタケは少なく、生がメイン。別館では去年からすぐ本格的に使いはじめ、本店は今年から。収穫時期には毎日のように届けてもらい、アラカルトにも使っています。ナバナも同時期なので、一緒に届きます。朝どれの野菜がお昼にもう食べられる、これはかなり贅沢なリレーですね。

「人」の字で支え合う


左:人の字に見えてくる原木シイタケ 右:井桁組み

シイタケの原木がお山から来ると、半分に割ってドリルで菌を打ちます。たくさん積み重ねて40日寝かし、その後、井桁に組みます。風通し良くして、水やりを続けること6ヶ月。最後に、人の字の形にもたせて組むのです。上下を逆にして菌を回りやすくできるので効率のよいやり方だそうですが、この形がなんだか、「人」の字に見えてきて、気持ちがあたたかくなりました。毎朝みんなが収穫しているのは、人の思いでもあるのだと。


越前町にあるあおぞらSHOP

【問い合わせ先】
社会福祉法人 こうち福祉会 蒼空舎
〒781-0304 高知県高知市春野町西分1188-1
TEL 088-894-5556
ホームページはこちら→ http://aozora-sokusya.or.jp/

仲間たちの育てた野菜が手に入るお店は、直営のあおぞらショップ、日曜市、スーパーの中の生産者コーナーなどです。見かけたら、手にとってみて、人の字を思い浮かべてみてください。