• 「穫」生産者のご紹介

葉ニンニクは土佐好み

元気を運ぶよ、葉ニンニク

高知龍馬空港にほど近く、海のそばの開けた田園地帯にある門田繁継さんの畑を訪ねました。冬場も露地で南国の太陽をたっぷり浴びて育つ、葉ニンニクです。農業団体を定年退職されてから農業を始め、ニンニクや花ニラ、タマネギなどの香味野菜を中心に栽培しています。葉ニンニクは手がけて4年目です。11月中旬から2月中旬まで、早朝に収穫し、袋詰め作業をして、鮮度を保つため、翌朝までいったんJAの予冷庫へ。出荷先は園芸連を通じて主に県内市場、スーパー向けなので、手に取って味わう機会もありそうです。


毎朝収穫している葉ニンニクの畑。畑で掘ってきた葉ニンニクを、職人技で美しく整えます。

花韮で知り合った育種家

葉ニンニクは今回の主役野菜ではあるのですが、門田さんの畑には仲間の野菜もいろいろ。その一つ、花韮(はなにら)には久礼の田中一男(かずお)さんとの思い出があります。田中さんは系統選抜をして、ニラの品種から、花の出やすいものを見つけて何世代も種を取り、花ニラの品種を作りました。

やがて高知県が独自品種「マルイチポール」として種苗登録。最初、地元の直販所で売っていたのを見た園芸連時代の門田さんは、これに惚れ込み、東京の大田市場へ航空便で送っていました。


田中さんはこの品種を、高知全体で作ってもらえるようにという志を持った人でした。門田さんのは最近農業をやめられた田中さんの思いを受け止め大事に育てています。


根元の白いところが格別美味

華珍園では、田中さんと中国野菜の花韮を通じてお付き合いをさせていただいていました。そして門田さんの葉ニンニクとも、ご縁で知り合ったのです。葉がやわらかく、白くしっかりした芯に甘みがある葉にんにくの美味しさをあらためて実感しました。中国では元来回鍋肉(ホイコーロー)は葉にんにくを使い、麻婆豆腐にも葱ではなく葉にんにくを入れます。豆板醤や麻辣醤など四川特有の辛い調味料で味付けに合いますね。


葉にんにくとヤリイカのピリ辛みそ炒め

カキと葉にんにくの玉子焼き

葉にんにくとサケの炒飯


これからはランチや宴会料理にも積極的に使いたいです。シェフたちの側にも、ホットな思いがあります。「高知の葉にんにくを広め伝える努力を、僕らが中心になってやっていきたい」と。


土佐人を支える、ニンニクのヌタ


生命力が旺盛で、世界的に見ても機能野菜のトップクラスに位置するニンニクの仲間ですが、もともと高知県民は葉ニンニクを好んで食べてきました。すき焼きにたっぷり入れたり、すりおろして味噌と合わせ、冬場の脂が乗った刺身と合わせたり。上品な緑色で食欲を誘う香り、葉ニンニク入りのヌタ。これがたっぷり掛かったブリやハマチの刺身、新鮮きわまりないドロメなどを愛好する食文化が今も受け継がれているし、むしろここに来て見直されてきた感があります。


また、お隣の赤岡で春に開催されるドロメ祭りでは、ヌタの素材として、門田さんの畑が活躍しているのだとか。前の海から揚がった魚に、ご近所畑の薬味を乗せて味わう、なんてお酒がおいしいことでしょう。

退職後は野菜作りで元気に


門田さんは退職後に園芸福祉士の資格を取り、「シルバー農園で楽しく生き生き暮らそう」というレポートを書いています。高知方式と言う、冬も肥料を吸収させるニラの栽培方法を作った功績も。高知県有望品目のプロジェクト担当に入っていた経験から、自分で作って検証しながらいろいろな品種を試して、高齢者でもできる露地野菜を探しています。生産者やJAへはノウハウをフィードバック。そして、一般用でも業務用でも、市場が求める野菜を、いつどうやって作るのか、退職した人が何か作りたい時、「こんなものどうですか」と提案ができるように願っています。「好きだからやっているんですよ」。穏やかな笑みに、日々の、地道でたゆまぬ実践がかいま見えました。

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