VOL.11食感を楽しむ生キクラゲの夏。

高知県高知市宗安寺

宗安寺きのこセンター

大坪 久仁子おおつぼ くにこ さん

中国料理ではお馴染みのキクラゲ。高知市郊外の「宗安寺きのこセンター」さんで、無農薬菌床栽培されています。おかげで夏はフレッシュな生キクラゲが手に入るようになりました。ビタミンDの宝庫ともいわれ、ミネラルや食物繊維、女性にとってお肌にうれしいコラーゲンをたっぷり含む食材です。

貴重な地元キクラゲが生まれた理由

そもそも、キクラゲという食材は、ほとんどが輸入品に頼っています。高知市にある宗安寺きのこセンターさんでは、中国産への不安が言われ出した5年ほど前から、アラゲキクラゲを栽培するようになりました。全国的にも生キクラゲは熊本、宮崎、徳島など限られた地域で作られるだけに、貴重な食材です。


生キクラゲ(左)と乾燥キクラゲ(右)。夏場は生で、他の季節は乾燥品を使います

栽培のきっかけは、沖縄の生産者さんが作れなくなり、菌のメーカーから提案されて、「物好きだから始めたんですよ」と話す、オーナーの大坪久二子さん。オガクズのブロックを使った菌床栽培のきのこメーカーとして、25年の歩みを経てきたベテラン生産者さんです。こちらでは、シイタケ、ヒラタケ、エリンギなど、多種のきのこを栽培されています。


オーナーの大坪久二子さん。きのこのキャラクターは自分でデザインしました。

温度と湿度を管理して、いざ「発生!」

鏡川河畔の生産現場を見学させていただきました。キクラゲは生を夏場に出荷し、他の季節は乾燥キクラゲに加工したものを出荷します。

栽培の手順は、菌を植えたオガクズブロックの入った袋を1ヶ月半寝かせて、「生えなさいよ」と光を当ててやって、発生をかけます。すると1ヶ月で生えてきて、4~5ヶ月収穫ができるのです。葉が丸くなってきたころが食べごろ。育ちすぎると波打って薄くなるので、こまめな収穫がコツ。



土の代わりになる広葉樹のオガクズは主に窪川、梼原産。徳島で粉にして、再び高知へ。


きのこ栽培専用の霧吹き機械、通称ぞうさん。

育つには湿度が90%必要で、気温が25℃前後の時に発生させるのだそう。そこで、ミストを吹き出す機械、通称「ぞうさん」が活躍。広い部屋全体へ霧が回るのです。夏は水に氷を入れて数℃冷やし、逆に冬はお湯を入れて、霧で室温を数度上げて調整します。


お山の植物性コラーゲン


プルプルゆれるような、植物性のコラーゲンが、根元や、ひだの内側にたっぷり詰まっています。指で生キクラゲの切り口をつまんでみると、透明なプルプルが押し出されそうなほど。お肌を大事にしている女性にとって、生キクラゲは格別うれしい食材かも。やわらかいのですが弾力があって、葉の厚みは、「これまで使っていた中国産の乾燥品とは別物の食感」とシェフたちも口をそろえます。

茶色い葉の裏には、白い酵素がびっしりと付いて、毛のように見えます。これが、アラゲキクラゲの由来。「これを洗い落とさずに食べてほしい」と生産者からのメッセージです。乾燥させると、葉の裏側にある白い酵素が目立ち、アラゲキクラゲらしい姿になります。


生キクラゲと大海老の醤油煮込み


いろんな野菜や生きものたちと


すっかりハウスの主になっているニワトリたち。産み立て卵が手に入ります。

きのこの本場といえば、東北地方。熱心な大坪さんはナメタケ栽培では特許を取りましたが、震災で元の菌が作れなくなってしまい、残念ながら栽培が終わってしまったそうです。

大坪さんが育てているのは、きのこだけではありません。敷地内にあるハウスの中は、消毒をせず、多品種の野菜が実り、ニワトリたちのいる楽園です。平飼いされているニワトリにはトサジローもいて、卵は、きのこ類や野菜などと一緒に、すぐ前の良心市へ出しています。卵かけご飯に最高だそう。「食べたいものは、育てんといかん」。芯を感じさせられる言葉です。

庭にはカブトムシやメダカもおり、お気に入りの皇帝ダリヤは近所や庭へ300本も植えました。咲き誇る季節が楽しみです


菌床を再利用して、畑を元気に


ところで、使い終わったきのこの菌床(廃菌床)を畑に入れると、土がふかふかになって野菜の育ちがよいそうです。特に大根や人参などの根ものが、わっと出ます。菌がまだ生きていて、その活動によって土の中に隙間ができて酸素が入るので、根が元気になるのだとか。廃菌床を近隣の農家へ分ける機会が増えてきたこのごろです。

今のところ、きのこの出荷は県内のみで、業務用の他、量販店へも出しています。今回ご紹介した生キクラゲの口あたりのよさ、調理のしやすさは、ご家庭でもいろんな食べ方が工夫できそう。乾燥キクラゲは量が多いので機械も使いますが、晴れた日は天日乾燥をしていて、高知の太陽を吸った乾燥キクラゲができあがります。

問い合わせ先

宗安寺きのこセンター
〒780-0991
高知県高知市宗安寺832-2
TEL 088-844-3075
※向かいに良心市があります。