VOL.12太陽香る、完熟マンゴー。
高知家吾川郡いの町枝川 むらた農園
村田 正幸 さん
百利子 さん
いの町のハウスで、村田さんご夫妻が愛情込めて育てられている完熟「よさこいマンゴー」。したたる果汁には高知の太陽と土、水のエッセンスが詰まっています。芳醇な香りと、コクのある絶妙な甘さ。農薬の使用を最少限に抑え、天敵昆虫で害虫を減らすなど、工夫いっぱいの栽培を見学しました。
お中元に合わせて色づく実
村田さんの完熟マンゴーは「子どもが喜んで食べてくれる味」と評判です。えぐみが少なく、完熟は糖度15℃以上。10年やってきて、自分らしい味が作れるまで4年かかりました。アーウィン種の完熟マンゴーを村田さんは「よさこいマンゴー」と命名。
収穫は6月上旬から7月末ぐらいまで、毎朝続きます。完熟すると茎から実が自然に離れて落ちます。そのため、1玉ずつネットをかぶせてあり、ハンモックのように受け止めているのです。
マンゴーはお中元商品なので、本来は早めに花を咲かせ、収穫を6月に終えて茎を切り詰め、来年花になる新しい芽や葉をたくさん出させるべき。でも高知はお中元が遅く、その作業も遅くなる分、翌年に少々手間がかかるとか。
赤土に、しっかりと根を育てる
大事に育てられる南国の果実、12月から5月ごろまではハウスを加温します。村田さんの木は12年ぐらい。地元枝川の赤土で育てています。この赤土がマンゴーにはよく合っていると、宮崎や沖縄の専門家にも言われるのだそう。
最初はポットに入れて育て、ポットを残して地植えします。そうしないと直根(ちょっこん)がまっすぐに何メートルも下へ伸びて地下水を吸ってしまい、花の時期を管理できなくなり、大変です。村田さんは直根をポットで押さえながら、他の根を四方八方へ元気に伸ばさせます。
根を大事にすると、細根(さいこん)が地上へも出て、甘みが増すとのこと。ただ、地上では根が乾くので、ワラやキビ殻などを敷いて保護しているそうです。
優しい農法が生み出す味わい
できるだけ農薬を使わないで育てている村田さん。高知県が取り組むエコシステム栽培を導入し、穏やかな効き目の農薬や、昆虫を使う天敵栽培、ハチによる受粉、あるいは納豆菌によって炭疽病の菌を押さえ込んだりということも。EM菌は液肥と一緒に土へ掛けてやり、葉面へも散布します。アミノ酸系の肥料は、魚粉(うおこ)の他、ニガリや、鰹のタタキや刺身のアラを腐らせた液肥も使います。
肥料と養鶏の一挙両得をねらってトサジローの放し飼いをしたこともありましたが、やがて飛び上がって実を食べてしまうようになり、断念。意外だったのは、ニガリをかけると、実を食べに来ていたナメクジが姿を見せなくなったことです。やはりナメクジは塩が苦手なんですね。
中華ならではのトロピカルスイーツに
完熟マンゴーは収穫後すぐに食べられますが、少し置いてもおいしく、人それぞれのお好みで。村田さんいわく、とれたては味がガッチリしていて、冷蔵庫で数日冷やして置くと、やわらかくなるそうです。
華珍園とは料理店仲間からの紹介で、昨年夏からのお付きあい。今年も盛夏から晩夏にかけて、マンゴープリンや冷たいデザートなどをアレンジします。野菜とはまた違う地元産果実のメニューに、シェフたちも意欲を燃やしています。デザートを楽しみにしてくださるお客さまも多く、力が入るのです。「プロが作る中華のデザートは、本当においしそう。家で作るのとは食感がぜんぜん違うよね」と村田さんもほっこり笑顔で期待を寄せていました。
甘さは負けない、ベビーマンゴー
ハウスの中でマンゴーを受粉させるのは、ミツバチの力を借りています。それでもすべての花が受粉するわけではありません。ベビーマンゴーは春に受粉をしないまま実った小さい玉で、中玉トマトぐらいのミニサイズ。花が咲いて4ヶ月後にやっと収穫できる通常のマンゴーよりも、早く熟します。外皮の赤みがいっそう強く、小さいとはいえ、甘さは大きい玉よりも強いほどだそうです。
ベビーマンゴーの食べ方は実をカットせず、皮をむいてそのままかぶりつくのがおすすめ。中には平たい種が入っていました。村田さんの直売所では、ひと盛り1000円ほどでお得に手に入ります。味を知って、ご自宅用に求める方が多いとか。
出荷の作業場は直売店も兼ねています。甘い香りが入り口から漂ってきて、出荷を控えた囲いショウガ(根ショウガ)の香りとも溶け合っていました。
問い合わせ先
むらた農園
〒781-2120
高知県吾川郡いの町枝川468
TEL 088-893-1752
※収穫時期は朝10時ごろから17時ごろまで毎日オープン。その日の朝に収穫したマンゴーが買える他、電話予約もOK。