VOL.17粘るよ、露地の夏オクラ!
南国市福船
株式会社南国スタイル
中村 文隆 さん
華珍園が企業向けの共同農園でお世話になっている、南国スタイルさん。法人設立2年目は、夏野菜のオクラを、生産者の依頼で露地栽培することに。地元のオクラを探していた華珍園に届く、その朝とれたての元気オクラ!夏場の疲れた体に元気をくれるネバネバパワー、お楽しみに。
農家からのSOSに応えて
「農業で、食べていく。」以来、半年ぶりの再登場となった、南国スタイルの中村文隆専務。日焼けした顔は、生産の現場を感じさせます。この会社は2012年に誕生した、JA南国市が出資する農業生産法人で、目的はずばり、地域の農業が「食べていける仕事になる」こと。設立2年目を迎えた春、思いがけない依頼が舞い込みました。
南国市久礼田の植田地区でオクラを作っていたベテラン生産者の方が体調を崩してしまい、種を撒くばかりになっていた畑の面倒を見てほしいというのです。オクラは野菜のなかでも珍しく、種撒きをして育てます。畝をととのえ、肥料も入れてある畑を、自分たち若い世代に託すという生産者の思いに、南国スタイルは応えました。
生産側と使う側のマッチング
種撒きは無事、3月22日に行われました。寒さのリスクを避けて、基準より1週間遅らせています。出荷が遅れるので出始めの値段は下がりますが、預かった大事な畑、安全策を取りました。
ちょうど華珍園でも、6月のおすすめ食材に選んだオクラの生産者さんを探していたところ。地元のオクラを決まった生産者さんから仕入れるのは初めてで、それもできるだけ高知市に近い場所を希望していました。南国スタイルさんとは共同農園事業を通じて、野菜づくりに畑へ通っているスタッフへの栽培指導もしていただいている関係。「そのオクラ、ぜひ分けてください」と話がまとまりました。主にはJAへ出荷されますが、直販所を通じて、朝どれのオクラが昼ごろ届いています。
花が咲いて5日で、もう収穫!
収穫が始まったのは6月3日から。空を向いてピンと実るオクラ、これから勢いづき、10月末まで、毎日、朝に晩に収穫していかねば追いつきません。朝は黄色い花畑のようになるオクラ畑、きれいな花は午後にはしぼんで落ち、あとに小さなオクラのベビーが育っているのを見ると、オクラの強い生命力を感じさせます。それにしても、花が咲いて収穫まで、たったの5日とは!
品種は高知で一般的なアーリーファイブ。ただ、オクラはとてもデリケートな野菜なので、膝丈ぐらいの大きさになるまでの温度管理や、収穫期の害虫対策に気を配って育てています。なんと、小さいうちは、湯たんぽの役割をするビニールのダクトを畑に敷いて保温してあげるのだそうです。
畑なみの鮮度で提供したい
華珍園の厨房では、その朝とれたオクラが昼過ぎ以降に料理されます。表面にうぶ毛をもつオクラ、収穫の時に手袋をするだけあって、厨房でも時々スタッフの手をかぶれさせるほど。でも、そういうフレッシュな野菜を手に入れて、最高の状態で自信をもってお出しするのが、産地のシェフ冥利です。
ところで、オクラは収穫された後も、野菜で1~2を争うほどの呼吸量があるとのこと。そのため密封すると黒くなって鮮度が落ちるので、保存は新聞紙でそうっとくるむのが一番だそうです。ちなみに、食用にする10cmぐらいのは未成熟な状態で、ほうっておくと30cmぐらいに成長します。そうなるとスジが張って食べられませんが、ちょっと見てみたくもありますね。
南国スタイルらしく、つねに前向き
全国2位の出荷量でオクラ県の高知ですが、中村さんもオクラには格別の思い入れがあります。営農指導員だった時に担当していて、自分の家でも勉強がてら作っていました。実は今も作っていて、出勤前の早朝に収穫して来るそうです。
「野菜の栽培技術は確立されていますから、あとは、暗黙知なんです。言葉にしづらい、個人のノウハウ。野菜は生きもので、毎年天候も違いますよね。いかに対応していくか。私達もひとつひとつが生きた経験になります」。
南国スタイルには、企業からの相談も、JAを窓口にして寄せられます。新しい試みとして、コマツナやホウレンソウで、水にこだわった栽培を地元企業と共同研究中。自治体も巻き込んでの大きな動きを目指しているところです。
【問い合わせ先】
(株)南国スタイル
(JA南国市出資農業生産法人)
〒783-0036 南国市福船372
TEL 088-855-3179