VOL.21ゴーヤの苦み、夏をゆく。
【高知県南国市岡豊町笠ノ川】
中司 邦夫 さん
美空 さん
夏を乗り切る苦みが好まれる「苦瓜」こと、ゴーヤ。7月から8月にかけてが露地もののピークです。沖縄の特産品から、またたく間に全国区の野菜になったのは記憶に新しいところ。抗酸化力を持つビタミンCを多く含んでいて、特に表面のイボに多いのだそう。中華料理のアクセントにもぴったりです。
緑のトンネル、ゴーヤ畑
ゴーヤを生産している、南国市白木谷在住の中司さん夫妻。陽当たりのよい南国市の平野部へ畑を借り、ゴーヤの「出づくり」を始めて5年目になるそうです。ゴーヤの畑は立体的で、栽培棚を支える柱はしっかりした杉の間伐材。身長ほどの天井からは大小のゴーヤが垂れ下がっています。繊細な葉っぱやツルが風に揺れる緑のトンネルを歩くのは不思議な楽しさでした。
中司さんの育てる品種は「節成」(ふしなり)。出荷は6月の下旬から8月いっぱいまで、まさに夏まっただなかの野菜です。苦そうな緑のイボを眺め、どうやって食べようかなとレシピを考えるのも楽しみ。成長し始めた実はどんどん太って、1日遅れても規格外のサイズになってしまうほどです。
受粉を手伝い、日射しを集めて
今年の定植は4月17日で、6月下旬ごろまでは人工授粉をしました。キュウリのように雄花と雌花があるので、雄花をプチッとちぎって、雌花にくっつけてあげるという方法です。雌花には花が咲いた時からすでにゴーヤとなるふくらみがあり、簡単に見分けられます。7月ごろからは花の量が増えるので自然にまかせるそうです。
実が成長し始めたら、葉っぱの影などにならないよう、太陽をまんべんなく当てて緑色に育てます。曲がらずに濃い緑色になっていれば、上出来です。「肥料はたくさん必要。切れたところに実がなったら、がくっと樹勢が弱ります」除草剤と農薬は1回だけで、普通の野菜より強いのですが、8月はヨトウムシが食べに来るので要注意なのです。
苦いゴーヤ茶に癒やされる夏
畑で暑い日射しを避けながら、冷やしたゴーヤのお茶を飲ませていただきました。これは、クセになりそうな味。中司さんたち白木谷の生産者が共同で作っているお茶です。上品で透明な水色、飲むとやはりゴーヤらしい苦みと香りに刺激されてスーッとします。苦みの濃さは茶葉ならぬ乾燥ゴーヤの量を調整すればいいんですね、なるほど。シロップや炭酸、あるいはアルコールをプラスしてもおいしそうな独特の風味が印象的でした。
このお茶は切ったゴーヤを乾燥させたものなので、お茶として普通に飲んだ後は、戻した干しシイタケのように、お料理に使えるのがミソです。南国市や高知市などの直販所で見つけたら、どうぞお試しください。
1年を通じて、中山間でできる農業を
中司邦夫さんが農業を始めたのは20代後半だそうで、タケノコ産地・白木谷を担ってきた世代です。現在ご夫婦で栽培しているのは、タケノコに四方竹、そしてゴーヤの3品目。春のタケノコが終わるころからがゴーヤの栽培シーズンとなり、さらに秋冬の四方竹へと続く1年のサイクルができあがっています。
収穫したゴーヤは日焼けに弱いので、朝の涼しいうちに収穫を終えて持ち帰り、出荷までに等級別の仕分けをしなければなりません。お茶用の乾燥ゴーヤ加工作業も並行して行っています。「台風が来たら収穫が終わるから、来ないことを願いながら」の収穫作業が続く暑い夏。この畑に流れてくる農業用水は、白木谷の山々からの澄んだ水でもあります。
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