• 「穫」生産者のご紹介

マコモタケの生命力に魅せられて。

きれいな立ち姿、マコモの田んぼ


マコモは日本にも古くからあるイネ科マコモ属の多年草で、水辺を好みます。その一部に黒穂菌という共生菌が作用して、芽が大きく膨らんだものをマコモタケと呼び、食用にしてきました。黒穂菌はお歯黒の材料にも使われた安全なもの。皮に包まれた形はヒゲのないトウモロコシのようでもあり、「こんな植物も田んぼも、見たことがない」というのが実感です。

黒潮町上川口の海岸線から、ほんの少し山あいへ入ったところに、池内正幸さんと酒井都さんの田んぼがあります。田んぼといっても、植えているのは見なれぬ背の高い草。最盛期には2mにもなる、とがった平たい葉が、空へと剣のようにまっすぐ立っています。これが、マコモタケを作る、マコモという植物です。


古くは神社でしめ縄などにも使われたという、 まっすぐ上を向いたマコモの葉。

マコモタケとの出会い・再会

そもそも、なぜマコモタケを育てるようになったのでしょう。


酒井さんは以前からマコモタケという食材があることは知っていましたが、実物は知らず、台湾旅行でちょっと見かけたぐらいでした。関西に住んでいた頃に神戸の中華街で生のマコモタケと出会った時はうれしくて、さっそく買って料理してみたのです。

「ほくほくして甘みがある。体験で、おなかにもよかった。健康食品には抵抗のある人もいるけど、”食べもの”なら栽培もできるし、受け入れられる」と思い、「田舎に帰ったら植えよう」と決意しました。ちなみに、買ったお店で「あなた糖尿ですか?」と聞かれたのには酒井さんも驚いたそうです。

最初の1株から始まった栽培

平成13年に故郷の大方へ帰ってきた酒井さん。ご近所の池内さんに、植えてみたいと持ちかけました。池内さんも興味を示し、三重県の農業改良普及センターで苗をもらってきたのです。平成17年、おそらく高知で初めてとなる1株を植え、3年目から休耕田を借りて農地を広げました。今では地元の道の駅や量販店にも出すまでになっています。

実は池内さん、これまで農業経験がなく、家庭菜園すらしたことがなかったそう。マコモタケ栽培の指導者も近くにはいないため、三重の先生に聞く以外、本や手探りでここまできました。マコモタケは株分けして育てます。「最初にもらった1株がよかったので、今は500株ぐらいになってます。」と池内さんが目を細めました。


華珍園とマコモダケ



高知では秋が旬のマコモタケ、華珍園には新鮮な「とれたて」が届きます。ご縁は3年前、中村の中華料理店さんの紹介でした。使いはじめてからマコモタケのためのメニューがお目見えしたのです。「面白い食材のようだ」と厨房のスタッフも興味津々。出したところ、お客さまから「これは何ですか?」という質問が多く、おいしさも手応えがありました。


アクがなく、甘みがあってエリンギとタケノコを足したような食感。加熱すると糖度が増す性質です。

生でかじっても甘みがあるマコモタケ。食材としての魅力は、「それ自体は個性がないのに、料理法によってまったく味が違ってくる。他の食材との相性もいい。焼く、蒸す、煮る、揚げる…油で焼いたり素揚げすると、よく味が出ますね。」とスタッフ。池内さんたちも、この味を高知の人に知ってもらいたいと願っており、家庭でのシンプルな食べ方の情報も交換していました。

育てあげ、収穫する喜び

5月に新しい株を植え、年に4回は必要な草引き。「肥料喰い」のマコモには、栄養もたっぷりあげなければなりません。10月から11月までが待ちかねた収穫、鎌で1個ずつ手刈りします。株の根っこを洗って見せてもらいました。「赤ちゃんで言うと、ここがへその緒やね。」と池内さん。生命力旺盛なマコモは、地下を伸びて栄養を摂り、新しい株を出します。


酒井さんは、「来年のために株分けをしたり、草取りをするのが重労働。ほとんど池内さんの力です。」収穫期は1日置きに田へ入って見て回り、プラケースを船のように浮かべて収穫する池内さんです。


皮が少し割れて、黄色がかった内側が見えてきたら収穫です。


できる限り自然の姿で、元気な食を

毎年同じ場所だと収穫が減るので、場所を換えて作ります。農薬が入らないよう、奥に他の田んぼがない場所を選んでいます。イノシシよけに張っていたのは大敷き網というのが、海の町らしさ。ウンカにやられて、「もうダメかと思うほど苦労した」経験もあります。対策には、冬場、葉を落としてから地上部をしっかり焼くといいそうです。

「マコモは吸い上げる力が強いから、水質浄化にもなると思う。」池内さんは、そんな話もしてくれました。この田んぼは、いかにも自然の姿。水草や藻が繁り、虫が飛び、泳ぎ、あぜを雑草が取り巻いている環境で、マコモタケがすくすくと育っています。



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